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●「音楽を通して、もっと豊かな暮らしを届けたい」
●未来をつくる 文/松永詠美子 2010 年 3 月 『 HAPPY BIRTHDAY Mr.B! 』という詩集を知っているだろうか。外国人のミュージシャンが、僧侶兼イラストレーターの日本人とコラボレートした詩集としてテレビ番組で紹介され、昨年多くの反響を呼んだ。クスッと笑えたり、じんわり染みたりするその詩は、10年以上老人ホームで音楽セラピーを続けているロビンさんが書き留めた日記のようなものだ。どうしてこんな詩が書けるのか。ロビンさんの温かな目線を、人として見習いたい。 「この前、笑顔の C さんの きれいな歯並びを褒めたとき 彼女はとても喜んで なんと それを取り出し 私に見せてくれました」 (『 HAPPY BIRTHDAY Mr.B! 』より) 一つ一つの詩はとても短く、一瞬を切り取った写真のようであり、それでいて長い年月を感じさせる物語のようでもある。『 HAPPY BIRTHDAY Mr.B! 』には、そんな99の詩と絶妙なイラストに、12曲入りの音楽 CD がついている。正に、見て聴いて感じる癒やしだ。 ロビン氏が、ザンビアのある養護学校で体験した出来事がとても印象的だ。「いろいろな障害のある子ども達が180人もいる施設に行ったとき、びっくりしました。目の見えない子、耳の聞こえない子、知的障害のある子、みんな一緒にいるんです。日本では、アメリカもそうですけど、障害によって学校が分かれてますよね。でも、アフリカで私が訪ねた土地では一緒なんです。また、授業は午前中だけで、午後は自由行動になるんです。しかも、ほとんどの先生たちは帰っちゃうんですよ。日本では考えられないでしょう。障害のある子どもたちだけで過ごさせるなんてとんでもないって、親が文句を言うでしょうね。でも、子どもたちはすごいんです。お互いに障害を補い合うんですよ。例えば知的障害の子は、お昼の時間が来ても気づかないけれど、耳の聞こえない子が時間を教えて、知的障害の子に道案内をしてもらいながら一緒に食堂まで行く……といったことがごく自然に、誰が教えるわけでもなくできている。子ども達だけで助け合うことがちゃんとできるんです」。 それは、聾唖学校だ、盲学校だと分けていたら起こらないこと。ロビン氏は、専門性を追求することは必要だけれど、それだけで考えると、先生も子どもたちも狭い世界になってしまうんじゃないかと心配している。ロビン氏の音楽セラピーは、どこかアフリカを思わせる自由なスタイル。それを学びたいという若者もいるようだ。 「あちこちの施設から呼んでもらうのは嬉しいことですけれど、1回だけじゃなく、一人ひとりにもっと丁寧に関わっていかなければいけないと思っています。今は私じゃないとダメという状態ですけど、早く私の代わりになれる人を紹介できるようになれればいいな」。 お年寄りや障害のある人と接するのは、神経も使うし、準備も大変だ。でもロビンさんは言う。「行けば元気がもらえるから」と、本当に楽しそうに。
●民族楽器の音で元気に ?高齢者施設を回る米国人ミュージシャン 文/飯田克志 2008 年 東京新聞 京都市在住の米国人ミュージシャン、ロビン・ロイドさんは、各地の高齢者施設で音楽療法に取り組む。民族楽器で奏でる音楽で交流を深めている。今秋、出会った高齢者の“素顔”を書き留めた絵本詩集を出版した。 ロビンさんは尺八と三味線を習うため23歳のときに来日した。アフリカの民族楽器で、木箱に取り付けた金属の鍵盤を親指で弾いて奏でるカリンバなどを用いた音楽療法に取り組んでいる。 民族音楽に興味を持ったのは少年時代。「14、15歳のころから、西洋音楽以外の民族音楽に興味を持って、世界地図を広げ、気になった国の音楽について図書館に行き調べていた」。 来日後も世界約50カ国を訪れ、自宅にある民族楽器は数百点にもなる。 音楽を使って相手を癒やしたり元気づけたりする音楽療法と出会ったのは「民族楽器を楽しんでもらおう」と企画したワークショップ。そこでは演奏体験だけでなく、民族楽器をめぐる旅で目撃した、人を癒やす音楽の力についても語っていた。 参加した音楽療法の専門家から「あなたの話していることは音楽療法そのものだ」と専門学校の講師にと誘われた。 アフリカなど再訪し、音楽療法という視点で演奏について学び直した。現在の音楽療法も学びたいと高齢者施設や障害者施設で行われる実践も見学。そこで、自らのカリンバの演奏で、子どもたちが元気になる体験もして、この道に入った。現在は全国の高齢者や障害者施設を回る。 訪れた施設では、季節に合わせ童謡を一緒に歌い、手に持てるシェーカー鈴、太鼓などの民族楽器をそれぞれの高齢者に渡す。「珍しいからと音を出し始め、楽器を交換し合う。リズムが出てきたところでカリンバを合わせるように鳴らすと、優しく盛り上がる」。 高齢者のやってみたいという気持ちに合わせる。「待つことを大切にしている。自然に童謡とかのメロディーになって、一緒に歌うこともある」「リズムに乗ると、普段は上がらない手が上がったりする」。 一般向けに通常のコンサートも開くが、施設訪問は別の手応えを感じている。声にはならないけれど、口を動かして歌う高齢者、病気から回復する高齢者の姿を見てきて、「音楽療法で体調が良くなる。役立っていることがうれしい」と実感している。 これまで出会った高齢者の姿を長年書き留めてきた詩99編を絵本詩集「 HAPPY BIRTHDAY MR.B! 」(コンテンツ・ファクトリー刊)にまとめた。 D さんは体操嫌い でも好きな音楽が流れると すぐに陽気に踊りだす! みましたか? I 氏が大喜びしていたあの笑顔 通路で誰かが立ち止まり 名前を読んでくれたんだって 高齢者の喜怒哀楽を俳句のようにつづる。「『高齢者だから』とみんなひとまとめに見てしまいがち。詩を通じて、一人一人の思いに寄り添えるようになってもらえたら」。
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![]() 旅には必ずカリンバを一つ持って行く。「音色も優しいし音を出すのも簡単。みんなすぐに集まってきて弾きたがるんだ」。言葉は通じなくても、ロビンさんは音によるコミュニケーションを楽しむ。そして「旅の最後に、一番お世話になった人にプレゼントする。だから旅に持っていくカリンバはいつも違う物だね」。 |
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![]() さっそく京都の町家に住む彼を訪ねた。部屋には変なところに穴が空いている壺とか、でっかい枝豆を乾燥させただけのようなものとか、ひと目見ただけで楽器と思えないようなものがいっぱいある。自分でも正確な数がわからないというコレクションを見せてもらっていると、木琴の下にひょうたんがついているガーナのバラフォンという楽器があった。叩いてみると、ひょうたんが音を共鳴させるので普通の木琴よりも震えたような面白い音がする。適当にポコポコ叩いていると、もうひとつのバラフォンをロビンさんが叩き始めた。こちらのリズムに合わせてくれているので、音と音が重なり合って響き始める。そのまま叩いていると空気がうねっていくのを感じる。音がピラミッドを上下にくっつけたような形になって浮かんできた!すごい、音って見えるんだ。それにさっきまで話していた時よりもすごく濃密に会話をしている感じがする。 |
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