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アフリカ大陸南端の喜望峰、かなたまで見渡せる場所に立つ。朝もやの中をひんやりした潮風が吹きぬける。腕を伸ばせば、南極にも手が届きそうだ。西には大西洋が広がり、東にはインド洋が望める。現在ここを訪れる人々は、ふたつの海が出会う正確な一線を見極めようと水平線にじっと見入り、スケッチをしたり、写真を撮ったり、詩や物語を作ったりする。
遠くにぼんやりと16世紀のヨーロッパの帆船が浮かんでいるのが見える。オランダ船に続いて、ポルトガル船、イギリス船。壊れそうな木造の船は用心深く喜望峰を巡る。ここはまだ、故国からインドへ向けての、あるいはその先のマレーシアやインドネシア諸島までの通過点に過ぎない。彼らの目指すのは、黄金、スパイス、異国の珍しい宝の数々。
時にはここで長い船旅が悲劇に終わることもある。船は突風に揺さぶられ、進路を失い、大波に飲み込まれ、まるで壊れたおもちゃのように荒い岩礁に叩きつけられる。
この岬の緑濃い肥沃な地に4万年もの間、牛や羊を追いながら生き続けてきたコイサンの人々は、高い崖の上から歴史の流れをずっと見つめ続けてきたことだろう。白人の愚かな行為を笑い飛ばしただろうか。死んでいった魂を悲しみ、祈っただろうか。彼らもまた何かを恐れていただろうか。目の前で打ち砕かれる船を見て、彼らの生活や文明の終焉を考えただろうか……。
辺りを見まわすと、今ここには誰もいない。少なくとも今朝、存在するのは君と野の花とカモメだけだ。行き過ぎる船もない。コイサンの人々の歌が風に運ばれてくる。ひっそりとして、穏やかで、美しい朝だ。
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