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それでも、決してひとりでそこに立っているのではないと安心させてくれるものがある。遠くの丘にほんのりと朝焼けの兆しが見え始めると、タンチョウヅルの声が聞こえてくるのだ。雪裡川のおだやかで温かい(人間にとっては決して温かくはないのだが……)浅瀬の中、ツルたちは群れ、雪のように白い羽のコートに頭を埋めている。夜にはほとんど見えぬ、影のようなツルの姿が、日の出とともに浮かび上がる。十、二十、いや三十羽以上のツルが背中をふるわせ、つばさをはためかせている。
一羽のツルの甲高い美しい鳴き声が、谷深くこだましてふたたび戻ってくる。今度は二羽のデュエットが聞こえ、その後には合唱がわき起こる……クワー・カッカッ…クワー・カッカッ……首を長く伸ばし、頭を下げて、堂々とした彫刻のようなつばさを羽ばたかせ、上へ上へと優雅に舞い上がり、朝霧の中を飛んでゆく。
あるものは低空をスローモーションのようにすべり
つばさのはためきを残していく
ツルのいる場所では時間がゆっくり流れる。気がつくと東から太陽がオレンジ色に輝きながら昇ってくる。風が雲を押しのけ、豊かに深い青空が見える。……クワー・カッカッ…地平線に見えるやわらかな白いシルエットの群れ。空気はまだ張りつめたような冷たさだが、川から少し高台へ登ると、少しだけ太陽の温もりが伝わってくる。
ここは、古代よりアイヌの人々の土地、自然の祝福と恵みを受けた場所。ゆるぎない冬の静寂、こだま、タンチョウヅルの声、ダンス、優雅な飛翔、すべてが我々と不可分なもの。
夢の中で耳を澄ませて…
頭上を舞うつばさと、どこまでも広がり、ささやく羽音
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